「インフルエンザ」と「歯周病」が手を組む?
「インフルエンザ」という全身の感染症と、「歯周病」という口腔内の感染症。まさかこの2つが裏で手を組んでいるとは誰も想像しないでしょう。
しかし両者を関連づける研究論文が、日本大学から発表されました。その核となる結論は以下のとおりです。
『インフルエンザウイルスが私たちの体に感染する際、歯周病の原因菌が持つ「毒素(酵素)」が、ウイルスの感染力を劇的に高めてしまう』
つまりインフルエンザウイルスにとって歯周病菌は、まるで城への侵入を陰で助ける「隠密」案内人のような存在になります。
専門的な話になるので、分かりやすい比喩で解説しましょう。
ウイルスが私たちの体(=城)に侵入(感染)するには、体(細胞)表面の扉の「カギ穴」を開ける必要があります。そのためにはウイルスの「カギ」がピッタリ合っていなければいけません。
カギ穴の役割:私たちの細胞表面にあるシアル酸という分子
カギの役割:ウイルスが持つヘマグルチニン(HA)というタンパク質
ウイルス単独では、このカギを合わせるのに手間取ります。しかし、ここで歯周病菌が登場すると話は変わります。歯周病菌が分泌するジンジパインと呼ばれる「毒素(酵素)」が、「カギ穴(シアル酸)」に巧妙に作用し、まるで合鍵で扉を開けるように城(細胞)への侵入を容易にします。これによりウイルスは手厚くもてなされた招待客のように城に入り込み、感染に至ります。