（写真提供：『九十一歳、銀座きもの語り』／KADOKAWA）
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創業200年、数々の文士に愛されてきた、銀座の小さな老舗呉服店『むら田』。60歳でその店を継ぎ、91歳まで店に立った店主・村田あき子さん。独特の美意識で、きものを愛し続けた女店主が、きものとともに生きた日々とは。あきこさんがその人生を語った『九十一歳、銀座きもの語り』より、一部を抜粋して紹介します。

きもの周りの小さなこだわりあれこれ

きものを頻繁に着る人は誰しも細かな部分に自分なりの工夫や好みを持っているものだと思います。

私にもあれこれとあって、まず、半衿は、絹とレーヨンの交織のものを愛用しています。以前は絹製を好んでいましたが、落ち着いた調子の交織製に切り替えました。近年は交織の半衿も質が高く、お客様にもお薦めしています。

ただ、真っ白な衿がふさわしい礼装の場面では正絹のものをつけています。その半衿はざくざくと襦袢に縫いつけます。本当に粗い縫い目ですが、それで十分。着付けの項でお話しした通り、半襦袢にはあらかじめ三河芯をつけてあるのでその上に重ねて縫いつけます。これで自然な衿の形に決まりますから、衿芯は使いません。

衿の汚れが目立つ時は石鹸で部分洗いをします。正絹との交織、あるいは正絹の半衿は自分では洗えないのではないかと思われる方が多いようですが、石鹸の手洗いでしっかり汚れは取れるし、ひどく縮むこともありません。生乾きのうちにアイロンをかければ簡単にきれいに整います。