あき子さんの愛用品＜春＞結城紬多色縞長着　二部式名古屋帯和更紗「花唐草」「変わり格子に菊」（写真提供：『九十一歳、銀座きもの語り』／KADOKAWA）
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きものの繰り回し

今着ているきものや帯の中で、一番古いものは祖母まるから伝わったふくれ織の帯です。〈持っているきもの〉ではなく〈実際に着ているきもの〉。織られた時から90年、あるいは100年ほどは経っているでしょうか。模様の一部がすれてしまって、お太鼓や前帯の縁も切れてしまっていますが、補修して大切に締めています。

もちろんすべてのきものや帯がここまで長く着用出来る訳ではありません。私などは毎日きもので暮らしていますから、裾や袖、つまり八掛が切れて来るし、膝の辺りも抜けてしまいます。特に銀座時代は通勤で駅の階段を上り下りしていましたから、裾に大きな負担がかかりました。

実は、一度、一体何回着たら裾回しが切れるのだろうと数えてみたことがあります。手帳につけて記録してみたところ、結果は30回でした。

そうやって裾や袖が切れたタイミングで洗い張りに出すことになります。特に結城紬は水をくぐらせることで柔らかくなって、とろんと肌になじむ風合いに変化していきます。大体4、5年に1回洗い張りをして、1枚を30年、40年着て来ました。