少しリアルな感じで
<歌舞伎座での芝居の稽古は普通、毎月の公演と公演の間の休演期間内数日間で行う。寺島さんが出演する『芝浜』では、初日12月4日の2週間以上前から稽古に入っているという。このインタビューも稽古場だった>
通常、歌舞伎で初日からこんなに前からお稽古をすることはありません。私が出演するからこそやってくださっているのでありがたいです。私にとって『芝浜』は、父の『芝浜』。でも、それをなぞろうとも思っていないですし、そういうふうになるとも思っていません。獅童君と夫婦役をやるのであれば、新しい政五郎とおたつができるのではないかと想像しています。おたつの核は兎に角、政五郎さんを愛してやまない、それだけです。
かすがいの子供もおらず、ひたすら酒に負けてしまう政五郎さんを支え続けるおたつの信じる心意気、これが大切なんだと思います。
私は歌舞伎役者でないので、歌舞伎っぽくやったとしても作りものでしかありません。そこは「型」というより、心の動きや動作など、ある意味少しリアルな感じでやれたらいいかなと考えています。