面白いと感じてもらえることが大切
<歌舞伎界が舞台の映画『国宝』は11月、歴代興行収入ランキングで邦画実写1位を達成した。任侠の家に生まれた喜久雄が、上方歌舞伎名門の女方・花井半二郎に才能を見出され部屋子として歌舞伎の世界に入り、半二郎の御曹司・俊介とライバルながら高めあい、「国宝(重要無形文化財)」になるまでを描く。寺島さんは、半二郎の妻、俊介の母である大垣幸子役を務めた。半二郎の代役に喜久雄を立てようとした時、「喜久雄は部屋子やで。俊ぼんが筋やろ!」という時の寺島さんの表情、セリフはすごい迫力だ。>
空前の大ヒットの作品になり、そのような作品に呼んでいただけたことはとても嬉しかったです。小さいころから歌舞伎界の悲喜交々を見て参りましたから。その中で自分が感じたことも多々あり、それらを全て詰め込んで演じました。
実は、私はまだ映画を見ていないのです。自分が出た作品はしばらく見ない主義なので……。数年経ってから見て、なぜ大ヒットしたのを分析してみたい。
<『国宝』の配給元東宝のYoutubeで、寺島さんは「スターが出てきたら皆で育てていくこともあれば、世襲か否かに関係なく歌舞伎界も変わっていくのでは思います」と語っていた。寺島さんの長男、初代尾上眞秀(まほろ)さんも歌舞伎の道に進み、最近では『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』で南郷力丸(なんごうりきまる)を演じ、高い評価を受けた。『国宝』の大ヒット、寺島さんも再び歌舞伎座に立つ今、歌舞伎に新しい風が吹いてきているようだ>
歌舞伎を見てみたい! と注目されているのだと思います。『国宝』で、歌舞伎役者でない人があそこまで演じたことに多くの人が魅かれたのも一つの証ではないでしょうか。
「面白い」と感じてもらえることが大切です。例えば、政治。高市早苗さんが女性初の首相になられて国会の生中継が多くの人に見られているのは面白くわかりやすい、そして何か新鮮だからです。なぜ日本人がMLB(メジャーリーグベースボール)を見るようになったかというと、大谷翔平さんというスターがいて野球の魅力を身をもって伝えられているからです。歌舞伎も同じで、今「面白い」と思ってくださるお客様が増えてきているなら、この機会を逃してはいけないのではないかと一歌舞伎ファンとして思っています。
ちょっと変則的な歌舞伎を見てくださった方が、『勧進帳』のような「ザ・歌舞伎」を見てみようというお気持ちになるきっかけになってくれることが表現者としての願いです。
