『全員集合』は公開生放送で、事前に緻密に話し合い、作りこんで本番を迎えます。生放送なので、会場の反応も予測できません。私の場合は、一人でとうとうと話した後で、最後に「う~ん、長さんのバカ!」と言うのが決めゼリフ。コントって、独特の間合いがあって、教えられてできるものではなく、あうんの呼吸を求められます。私は幸いできていたようで、「聖歌隊」でもそのコントをやらせていただきました。
志村さんは、メンバーになってからすぐに人気者になったわけではありません。でもその後、「東村山音頭」「ヒゲダンス」「変なおじさん」などを生み出し、加藤茶さんに負けないような人気者になっていきました。番組の中で、志村さんが「♪カラスの勝手でしょ~」と歌うとホールが波打つくらいの大合唱になり、笑いに包まれる。
しかし一方で世間からは、子どもが変な歌詞を歌うようになると困るという理由で批判もされた。そんなときにいかりやさんは、出演者やスタッフを前に「子どもたちはきちんと元の歌詞を知っているから笑うんだ。パロディというのは、そういうものだ」と。批判にさらされる志村さんの、揺らぎそうな自信を取り戻すために言ったのでしょう。ドリフのみんなは大人でしたね。志村さんが自由にのびのびと躍動することを許していました。チームに支えられ、喜劇人、志村さんは才能を開花させていったのだと思います。
動物相手にもコントを
『全員集合』の放送と同時期にフジテレビ『ドリフ大爆笑』が始まります。そこの一コーナーだったバカ殿様が『志村けんのバカ殿様』になるのですが、こちらは生ではなく、スタジオ収録で、「作りこんでいく」お笑いでした。こう言ってこうやって最後に落とす――何人かのアイドルの歌い手がいて、最後に、私扮する腰元が年齢詐称して殿に斬られるという場面。私が「15(歳)でございます」と言うところまでは決まっていて、そこから先はアドリブ。志村さんが何をするかわからないので、その都度変わる。私が何を言っても返してくださって、コントを構築していくというのはこういうことなのだと教えてもらった気がします。
日本テレビ系『天才!志村どうぶつ園』で動物と触れ合う番組が始まったときは、志村さんはこういう境地に達したのかと、意外な感じがしました。人を相手にした喜劇ではなく、動物相手です。でもチンパンジーのパンくんとのやり取りはコントそのもの。動物ですから仕込むわけにいきません。パンくんの動きに合わせて即興的にやり取りをしていく。何が起こるかわからないという刺激があったのでしょうね。いつでも喜劇を目指す姿勢を忘れていないのだな、と感じられて私はうれしかったのです。