大腸の内視鏡検査にろくな思い出はない。検査そのものは、羞恥心さえ捨てれば楽なものである。後ろに穴のあいたパンツをはいてベッドに横たわり、お医者様に突き出したお尻の穴から管を入れられて、その管は体内宇宙の旅を開始する。受けている側は軽い麻酔をかけられて朦朧とした状態なので、痛みもかゆみも恥ずかしさも一切ない。

「はい、終わりましたよぉ」

看護師さんの元気な声に目が覚めて、「あ、終わったんですか?」ってなもんである。つらいのは検査が始まるまでのこと。まず、大量の下剤を飲まなければならない。

「お腹の中が空っぽになったと思ったら、病院へ来てください」と言われていたが、「もう出すだけ出した」と見切りをつけて、いざ出かける支度を始めると、再び「ググググ」ときて便座に座るはめとなる。これを何度も繰り返し、どのタイミングで出かけるか、病院へ着く前にもよおしたらどうしようかと、その葛藤がたまらなく、つらい。

しめしめ、今回はあのつらい思いをせずに済むのだな。検便なんて、子どもの頃に何度も経験しているからお手のもの。そう思ったのが、甘かった。