阿川佐和子「謎の冷暗所」

さて、今回、採取したブツを、「なるべく冷暗所に保管しておいてください」と説明書にはある。

「このことだったか……」

実はそれより少し前、年配のご婦人に聞いていたのだ。

「検便を冷暗所に保管しろって書いてあったから、私、冷蔵庫に入れておいたの。そしたら友だちに呆れられちゃって」

やだ、そうだったんですかと、その場では驚いてみせたが、いざ自分の番になると迷う。この暑い日々である。洗面所や玄関でもかなり高温になっている。やはり冷蔵庫だろう……。「えーー」と怪訝な顔をしたのは我が秘書アヤヤ。

「私なら、保冷剤と一緒に玄関に置いておきます！」

そうかなるほど。一応納得した顔をしておいた。が、今、ここで告白する。私は冷蔵庫に入れました。端っこのいちばん上の棚の上。もちろん生鮮食料品とは離しておいた。匂いは発生しなかった……と思う。そしてよく冷えたブツは、私が持ち出すまで誰にも気づかれなかった。ヒッヒッヒ。

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