(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年の労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は13.6%と、長期的に上昇傾向にあるそうです。この状況のなか、ジャーナリストの若月澪子さんは「年金だけでは暮らせず、働き続けざるを得ない高齢者が増えている」と語ります。そこで今回は、若月さんがさまざまなシニア高齢者へのインタビュー取材をまとめた『ルポ 過労シニア 「高齢労働者」はなぜ激増したのか』より一部引用・再編集してお届けします。

「貯蓄ゼロ」シニア

「給料は日払いか週払いでしかもらったことがない。金が足りない時は前払いでもらうこともある。やりくりが大変なんですよ。月払いにしたいけど、今の状況だと全然できない」

こう話すDさん(64)は、長年、派遣会社を通じて、肉体労働に従事してきた「貯蓄ゼロ」シニアだ。

事前に「私はライターで、お仕事について取材させて欲しい」と伝えていたが、Dさんはカタカナの職業がよくわかっていないようだった。

「えーと、リモートワークだっけ?」

「USA」とプリントされたキャップ帽、メジャーリーグ風の赤と青のスタジャン、骸骨がプリントされたGパンをはいた痩せた体。ファッションは若者風だが、帽子と黒マスクを外すと、頭のはげた、頬のたるんだおじいさんが現れる。

Dさんには貯金も、人生計画もない。その日暮らしの生活を未だに送っている。服装も生活も、10代の頃のまま60代になった。

「いろんな仕事をしてきた。派遣はけっこう長くやってる」