シルバー人材センターも人手不足
実はシルバー人材センターにも、日本にはびこる人手不足の波が押し寄せている。
「みなさん、体調を崩して休会とか、急に倒れて辞めるとか、そういったことで次々と欠員が出ます。学童パトロールの仕事に入ってまだ半年ですが、すでに2名の方が倒れました」
今の60代は、雇用延長で元の勤務先で働く人が増えているため、シルバー人材の登録者の年齢は玉突きで上昇し、高齢化によって会員は減少している。現在、全国の登録者の平均年齢は74歳。健康リスクを抱えやすい年齢だ。全国のシルバー人材センターの中には、高齢化で会員が集まらず、組織そのものが解散してしまうところも出ている。
60代後半のJさんはシルバー人材では若手で、引く手あまたなのだ。
「シルバー人材には年齢制限がないので、働けるうちは働きたいですね。ただ、本業はあと2年くらいで終わりだから、そうなると年金とシルバー人材だけで暮らさなくてはならない」
Jさんはかなり焦っているようだった。Jさんは60歳になる少し前から家計簿をつけ始め、この先どれくらいのお金で生活していけばいいのかも、こまめに追跡してきたという。シニアになっても生活にゆとりのある人は、どこか危機感を持っている。
「家がとても古いので、子どもたちに建て直しの費用を残してあげないといけないと思っています。そうするとあとどれくらいのゆとりがあるか、いくらくらいで暮らせばいいか、しっかりコントロールしなくては」
貧しくなっていく将来世代のために親ができることは、お金を残すことだけなのだろうか。先の先まで考え始めたら、2000万円では到底足りるはずもない。
※本稿は、『ルポ 過労シニア 「高齢労働者」はなぜ激増したのか』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
『ルポ 過労シニア 「高齢労働者」はなぜ激増したのか』(著:若月澪子/朝日新聞出版)
『副業おじさん』で話題を呼んだ労働ジャーナリストが、21人の高齢労働者に密着取材。
やりがいと搾取の狭間で揺れる姿を通して、現代日本が抱える「見えにくい貧困」と「孤立の構造」に鋭く切り込む。
「働く高齢者」の実像に迫る、渾身のノンフィクション!




