運動会
運動会イメージ(写真:stock.adobe.com)
noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、『褒めてくれてもいいんですよ?』を上梓した斉藤さんによる連載「嫉妬についてのエトセトラ」。第19回は「この世は『図々しい』『天然』のが幸せ?」です

前回「斉藤ナミ「『嫉妬しない人』と対談してみた。嫉妬マニアの私は〈足るを知れ〉と突っ込まれるが、嫉妬の感情を失うと、人生の推進力を失うのでは?」はこちら

世間には図々しい人がたくさんいる

夕方、スーパーで買い物をしていた。数人が並んでいるレジの最後尾に並び、順番を待った。しばらくして前の人がお会計を済ませ、ようやく次は自分の番だ! と進もうと思ったところに、ショートヘアで小柄なおばさんがグイッと割り込んできた。

「え?」

あっけに取られているうちに、おばさんは買い物かごを「よいしょっ」とレジカウンターに降ろしていた。しれっと割り込んでんじゃないよ! なんて図々しいんだ! 

レジの店員さんからは死角になっていてその様子は見えていない。
「私が先だったんですけど!」と言う勇気もなく、大人しくそのおばさんの後にお会計するしかなかった。おばさんは悪びれる様子もなく、買ったものを自分のバッグに移していた。くそー! はらたつ!

世間には図々しい人がたくさんいる。

子どもの運動会でのこと。保護者の撮影スペースは「わが子が出番の保護者に最前列を譲る」のが通例なのに、関係なく最前列に居座り続けている人がいる。町内のゴミ当番やドブ掃除には一切参加しないのに、当たり前のようにゴミを出し、町内の夏祭りには来るような人もいる。仕事関係でも、デリカシーのない発言をする人や、空気を読まずに自分の要望を通す人などがいる。

そういう人たちを見ると心拍数が上がり、嫌な気分になり、帰宅後も悶々と考えては疲れてしまう。

「お子さんが終わったら変わってもらえませんか?」

「ゴミ当番、ちゃんと来てもらえませんか?」

「他の人のことも考えてもらえませんか?」

そんなこと言えたらいいのに……。いや、言えるわけない。意を決して言ったとしたら、何日も後悔してしまうし、その人を見かけるたび逃げ出してしまうだろう。

こちらはこんなにモヤモヤしているのに、当の本人たちはいつでもケロッとしている。ずるい。私だってゴミ当番なんてしたくないし、一番いい場所で子どもの写真を撮りたい! 

彼らはルール違反をとがめられるどころか、得をしている。じゃあ、世の中デリカシーがない人の方が幸せじゃないか?

私の夫もそうだ。子どもたちが登場しないうちから最前列に陣取って「なんか言われたら退けばいいじゃん」とケロッとしている。非常識だ! でも、良い写真が撮れそうで頭の隅で「いい写真撮ってね」と思っている。

そうだ。私は図々しい人たちを「非常識だ」と怒るのと同時に、そんなことができて羨ましい、と思っているのだ。

この「他人にどう思われるかを気にしない」メンタルは、時として、社会的な成功をつかむための最強のカードにもなる。そのことをまざまざと見せつけられた出来事がある。