知らない人からお茶に誘われた話

先日、X(旧:Twitter)のDMでメッセージをもらった。

「名古屋に来てます! 〇〇県から出てきたんでお茶してもらえませんか?」

誰だ? 名前をXで検索すると、地方で活動している20代の男性カメラマンらしい。知らない人だ。相互フォローもしていない。今までコメントのやりとりをした記憶もない。なんで私が時間を割いて知らない人とお茶しないといけないんだ? 「出てきたんで」ってそれはあんたの都合だろう。

「すみません。今日は予定があるので……」とお断りした。予定がなくても断ったけど。

しかし、彼はその日、名古屋に住むデザイナーと会ったようで、夕方頃、嬉々として「前々からお会いしたいと思っていた〇〇さんとお会いできました! これから一緒に楽しいお仕事ができそうでワクワク!」と報告していた。

……すごい。こういう人はきっと「断られて元々。受け入れてくれたらラッキー」と、どんどんアタックして人脈を拡げているんだろう。起業家やフリーランスには、こういう才能が武器になりそうだ。

私も負けてられない! 自分でできないと決めつけているだけで、挑戦してみたら意外とできるかもしれない。素晴らしい未来が待っているのかもしれない!

そう思い、東京に用事がある際に、メールやオンライン会議で何度か仕事のやりとりをしたことがある編集者さんに「〇日に東京へいくんですが、よかったらランチでもしませんか?」とメールしてみた。

断ってくれ断ってくれ断ってくれ! 誘っておきながら、ひたすらそう祈った。
返事はこうだった。

「ぜひぜひ。楽しみです!」
ええ、いいの!? うわー、断られなかった。どうしよう!

当日まで、頭でたくさん会話のシミュレーションをしまくってげっそりした。何度も「やっぱり断ろうか」と「いやいや、途中でやめるなんて失礼だ」を繰り返した。前日の夜から当日の新幹線の中もずっと気が重く、胃が痛かった。

困る女性
(写真:stock.adobe.com)

ランチは緊張で始終カチコチ。シミュレーションしておいた会話なんて全くできなかった。当然、仕事につながる話も、気の利いた楽しい話もできず、編集者さんも「なんで誘ったん? 無駄な時間を使ってしまった」という気持ちでいっぱいだっただろう。

きっと嫌われただろうな……と被害妄想がどんどん膨らんで、帰りの新幹線では胃薬を飲んだ。本当に申し訳ないことをした。

やはり私には知らない人にいきなり「会いたいんだけど」と誘うなんてことはできないんだ。他者の視点を恐れない人たちに対して、心底羨ましいと思った瞬間だった。