ケーキを食べる女性
(写真:stock.adobe.com)
noteが主催する「創作大賞2023」で幻冬舎賞を受賞した斉藤ナミさん。SNSを中心にコミカルな文体で人気を集めています。「愛されたい」が私のすべて。自己愛まみれの奮闘記、『褒めてくれてもいいんですよ?』を上梓した斉藤さんによる連載「嫉妬についてのエトセトラ」。第18回は「嫉妬をしない人が、私の前に現れた」です

前回「斉藤ナミ「妊娠中、夫が会社の後輩と怪しげな行動に。爆発した怒りと続く凶行をおさめられたのは、息子がいたから」はこちら

嫉妬をしない人が現れた

嫉妬マニアの読者からこんなメッセージが届いた。

「私は人に嫉妬しません。斉藤さんはどうしてそんなに嫉妬できるんですか?」

嫉妬をしない人なんて本当にいるの?

その人の心は、ありとあらゆるものに嫉妬している私と比べてどのくらい穏やかで幸せなんだろうか?

気になって仕方がない。嫉妬をしないとはどういうことか? 生まれつき嫉妬しない性格? 訓練や努力によって嫉妬をしなくなった? もしくは嫉妬をしていることに気づいていない? メッセージに返事をして聞いてみた。

SNSのアカウントを見ると、送り主のSさん(仮名)は都内に住む2人の子どもがいる30代前半の母親のようだ。若くて、東京に住んでいるという時点で、もう羨ましい。

Sさんから返事がきた。

Sさん:「他人に興味がないんです。人に勝ちたいとか、羨ましいとか思えないんです。他人が自分よりすごいのは当たり前で、自分には敵うはずがないので、負けてもいっか、みたいな感じです」

そういうことか。でも、嫉妬がゼロってことはないだろう?

斉藤:「好きな人を独り占めしたいとか、これだけは勝ちたいとか、どうしても手に入れたいとか、少しはありませんか?」

Sさん:「ないかも。何かに失敗すると落ち込むだけだし、頑張るのは疲れるので。やれることだけやって、必要とされれば応えます。どうしても手に入れたいものとかもなくて、今日はあったかいなとか、このケーキ美味しいなとか、そういうので満足してしまいます」

斉藤:「心が穏やかそうで羨ましいです」

Sさん:「それが全然いいことだとは思えないんです。疲れることはなるべく避けたいけれど、このままでいいのか不安になるし、逃げているような気もして焦ります。焦ったところで、5秒くらいで、私にはやっぱ無理だ、仕方ない、と思って終わってしまいます。だから私はナミさんに憧れてるんです」

なるほど。嫉妬をするのはとにかく疲れるということか。確かにそれはそうかもしれない。

何もかもに嫉妬しまくっている私は、エネルギーがあって元気ということなのだろうか? うーん、どうだろう。私は元気がなくても、たとえ寝たきりになったとしてもドロドロと何かに嫉妬してるんじゃなかろうか?

Sさんには「こんなものには憧れないほうがいい」と伝え、取材に応じてくれたことに感謝をした。