幸せな人生なんてない

残間 大石さんはご自分が大病をなさったり、ご主人を亡くされたりと大変な時期を超えて来られましたが、振り返って何を思いますか?

大石 誰の人生を見ても、みんな不幸ですよね。今日のテーマは「しあわせな人生」ですけども、そんなのないと思います。

人は意に反して生まれ、意に反して死ぬ虚しい存在だし、老いていくのも修行みたいだなと思います。みんなそうだと思うので、様々な悩みを抱えながら暮らしている人達が、このドラマを観たらちょっと元気になった、希望が湧いてきたと思えるような作品をお届け出来たら、私もしあわせです。

今はお金を払って見る配信が尊いと思われがちですが、つけたらやっている地上波のドラマが私は好きです。地上波で人生の糧となるようなドラマ、既成の価値観を打ち破り、人の心を自由にするようなドラマを作りたいです。

イメージ(写真提供:Photo AC)

残間 阿部サダヲさんが夫役で松たか子さんが妻役を演じたドラマ『しあわせな結婚』の2人は幸せではなかったのですよね。 夫が「やっぱり家族って面倒くさい。妻は果てしなく不思議だ」と言うところで終わっていましたけど。

大石 2人は再び結ばれて幸せだと思います。ただ夫婦って簡単ではないです。だから「あぁよかった」で終わるのは物足りない。苦さも残しつつの8割方は「よかった」にしたかったんですね。

残間 その苦さが気になっている人が多いらしく、第2弾はないんですか?と読売新聞に投書している人がいましたよ。

大石 第2弾はないです。あの先を描いても面白くないと思いますから。

残間 2割の苦さがあるというのがリアルだと私は思うのですが、とにかく絵に描いたような幸せなんてないと。

大石 ないと私は思いますね。中園さんは短期楽観主義で私は長期悲観主義で、中園さんは楽しむのが上手だし、いつも朗らかだし。でも、子育てしながら寝ないで仕事をする根性は半端ではないし、その後もさまざまなことと戦い続けてきたのに違いなくて……。私は知っているのです。

中園 えっ、何を?

大石 私が『光る君へ』の最後の頃の打ち合わせでNHKを訪れた時、7階の打ち合わせ室の隣の隣の部屋に中園さんが来ているというので声をかけに行ったんですよ。そうしたら見たことがないくらい険しい顔の中園さんがいて、とてもじゃないけど「もしよかったら、このあと飲みに行かない?」なんて声をかけられる感じじゃなくて。

中園 いやだぁ。お恥ずかしい。

大石 私は静々と部屋に戻って大河のスタッフに伝えました。「今、『あんぱん』チーム、凄いシビアだよ」って。

中園 アハハ。