夫を捨てるのも元気なうちでなければ

残間 結婚生活は何年だったんですか?

大石 45年です。

残間 別れたいと思ったこともありました?

大石 あります、10回くらい。(笑)

残間 結局のところ添い遂げたのは何故ですか?

大石 離婚するのが面倒くさかったというか。離婚届を用意していたこともあったけど、引っ越すとなると大変だと思い留まったり、自分が病気になって夫がいてくれた方がいいかもと離婚を撤回したり……。後半は夫が年老いていたので、ここで手放すとすごく惨めな最後になっちゃうなと思って。そこまでの恨みはないので。

残間 夫を捨てるのも元気なうちですよね。

大石 ホントにその通りです。新たな恋とか仕事とか、その先の希望があるうちでないと、バツイチになっても楽しくありませんからねぇ。

残間 でも夫婦としての最後のミッションだと思ったという言葉からは冷めた関係だったとは感じられなくて、同士愛みたいなもので繋がっていたのかなと。

イメージ(写真提供:Photo AC)

大石 恩義を感じていました。私は25歳で結婚したのですが、今、あの頃の自分みたいな人間が目の前にいたら殴ってやりたいというくらいダメダメ人間だったんです。役者になりたいけど、どうしたらいいのかわからないってモヤモヤした挙句、イライラして荒れたり、ワーワー泣いたり。サラダの入ったサラダボウルを頭から被ったり。

残間 アハハ。本当に?

大石 夫は明日こそ病院へ連れて行こうと思ったと言ってました(笑)。そんな時に夫が「役者になりたいなら燻ぶっていないで一歩前へ出ないといけないよ」と諭してくれて、今日から家のことは一切しなくていいから自分のために生きろと。あんまり言うのでその通りにしなくちゃいけないのかなと思って、そこから積極的にマイナーな芝居に出たりし始め、脚本家の道も拓けてきたんです。あの時の夫の言葉がなければ今日の私はないと思うことの感謝がありました。そのことに対する恩返しを最後の3ヵ月間でやったと思っています。