「先生の寮でのルームメイトについて教えてくださいませんか?」

 ハルと秀梅が授業終わりに教室の外で呼び止めると、櫻井先生は露骨にいやそうな顔をした。

「ねえ、まだそんな昔のこと調べてるの? この前、説明したわ。もういいじゃないの」

「よくないですよ。どうして姉とルームメイトだったってこと隠してたんですか? しかも山本さんが退寮してからは、たったひとりのルームメイトだったでしょう。なんで話したこともないなんて噓をついたんですか?」

 櫻井先生は、気まずそうに視線を下げる。手に持っている教科書がかすかに震えていた。

 秀梅はさらに追い討ちをかけるように、チャペルで見つけたハガキをさっと櫻井先生の目の前にかざした。

「ほんとうは姉に届くはずだったハガキです。十年間ずっとチャペルにあったんです。先生は、姉に伝言を伝えなかったんじゃないですか? 明日子さんが姉への伝言を頼むとしたら、ルームメイトの櫻井先生だったと思うんです」

 その一言で顔を真っ赤にした櫻井先生を見て、ハルは、おそらくそのことがいちばん暴かれたくない秘密だったのだろうということに気がついた。

 しばらくして観念したように、櫻井先生は、いいわ、話すわ、と窓の外に見えるベンチを指さした。