最早、自分のために小説を書いているのかも

――小説を読むという行為は本当に面白い。SNSやゲームばかりではなく、もっと小説を読もうと思わせてくれた作品です。

イメージ(写真提供:Photo AC)

そう言っていただけるのは小説家冥利に尽きるのですが……。もちろん読者に楽しんでいただけるように書きたいという思いはあります。

でも人間は、もともと不条理に満ちた生き物です。平穏無事なだけで過ぎていく人生は誰にもありません。そこにこそ焦点をあてて、面白がったり、絶望したり、虚しさを味わったり、それでも生きていることを否定しない、可能な限り肯定したい、というまなざしがごった煮になっているような作風は、初期の頃から恐ろしいほど変わっていません。これからも変わらないでしょう。

さらに言えば、私は今はただ、自分のために書いているといったほうがいいかもしれません。単に読者のために面白さを追求し、提供したいと思っていた時期は20年くらい前に卒業しました。自分の中に浮かび上がってくるテーマを、いかに平易な文章にして表現していけるか。そっちのほうにシフトして、今は完全にそちらの世界にいるような気がします。