(写真提供:Photo AC)
内閣府が公開した「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年10月1日時点での65歳以上人口は3624万人で、総人口に占める割合は29.3%だったそうです。超高齢社会といわれるなか、高齢者医療の現場に長年携わる精神科医・和田秀樹先生は「現実は『高齢者に優しい社会』とは程遠い。社会全体で尊ぶどころか、『高齢者ぎらい』の空気を醸成しているのが現状」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の新著『「高齢者ぎらい」という病』より一部を抜粋してお届けします。

総合診療とは

たとえば、食欲がない、眠れない、疲れが取れない、腰が痛いなど、一見関連はなさそうないろんな症状があるとしても、それぞれを治そうとするのではなく、人間全体を診た上で治療を行おうとするのが総合診療です。栄養不足や心の問題、あるいは薬の副作用なども加味しながら、心を含めた身体全体の状態を見極めた上で、どう対処するかを検討するのです。

そもそも、総合診療医は「すべての数値を正常に戻すこと」よりも、「今いちばん困っているものは何か」という視点で患者さんを診るので、「基準値信仰」とも別物です。あくまでも、その患者さんを最も楽な状態にするため、あるいは、患者さんの生活の質を上げるために、どの治療を優先すべきかを考えるので、治療の優先順位に応じて、薬をやめるという判断もします。

その結果、10種類以上飲んでいた薬を、3〜4種類まで減らすようなことはめずらしいことではなく、薬を減らしたぶん立ちくらみやふらつきなどの副作用が減って高齢者はどんどん元気になります。

つまり、臓器別診療から総合診療に転換することで、健康寿命を延ばせる可能性も、無駄な薬剤費や介護費を減らせる可能性も非常に高いのです。