デジタル技術を駆使して市民と政府を繋ぐ
台湾の蔡英文総統は Twitter で盛んにメッセージを発信し、国民に対して感謝の意を示し“チーム台湾”としての連帯を呼びかけるだけでなく、他国にもポジティブなメッセージを送っています。
もちろん首脳のSNSは高度に洗練された政治的なメッセージでもあります(思いつきでツイートして顰蹙を買っている首脳や、国民の神経を逆撫でするような動画を上げて自ら信頼を落としているリーダーもいるけど)。台湾がこれだけコロナ対策で成果をあげているにもかかわらず、非友好的な態度を取り続けるWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長に対しても、はっきりと抗議のメッセージを出しています。
こうした台湾の高度なデジタル戦略を支えているのがオードリー・タン氏。デジタル担当政務委員として35歳で入閣した彼女は天才プログラマーであり、デジタル技術を駆使して市民と政府をつなぐさまざまな取り組みを支援しています。
徹底した情報開示が信条で、テクノロジーを活用して市民が身近な課題を解決するいわゆるシビックテック・コミュニティと政府のチームとの橋渡しをするなど、政治家というよりは社会活動家に近い視点の持ち主のようです。タン氏はトランスジェンダーであることを公言しており、ジェンダー多様性という観点でも、台湾の政権は先進的です。
温かみとエンパシー(他者に対する想像力を働かせた共感)を重視したコミュニケーションでは、ニュージーランドのアーダーン首相が注目を集めました。記者会見での丁寧な説明に加え、夜子どもを寝かしつけた後に自宅からオンラインで国民の質問に回答。
外出制限下で、「歯の妖精とイースターバニーは来てくれるの?」と気を揉む子どもたちに「歯の妖精とイースターバニーはエッセンシャルワーカー(必要不可欠な労働者)と認めますよ。だけど今年はバニーもお家で家族と忙しくしているだろうから、もし来られなくてもわかってあげてくださいね」と笑顔で説明。(「歯の妖精」=乳歯が抜けた時に枕のそばに置いておくと、寝ている間にそれを小銭に替えてくれる妖精/「イースターバニー」=復活祭のお祭りに卵を運んできてあちこちに隠しておいてくれるウサギ)
科学的コミュニケーションと医学の専門家たちを同席させて子ども専用の記者会見を開き、子どもたちの新型コロナウイルスに関する疑問にも答えました。フィンランドのマリン首相も、オンラインで子ども向け記者会見を開いています。こうした取り組みからは、子どもを社会のメンバーとして尊重し、彼らにわかるような言葉で正確な事実を伝えようという姿勢が感じられます。