富と力の所有を争う政治からシェアとケアの政治へ
では何が重要か。今回判明したのは、未知の危機に強い社会とは、科学的な事実に基づき、人命最優先で迅速な決断を下し、生活を守るための施策を確実に行い、透明性と国民とのコミュニケーションを重視するリーダーが率いる社会であるということです。
つまり、そのような資質を持った人物が、性別を理由に活躍の機会を阻まれることなくリーダーに選ばれるようなコミュニティこそが、強い社会なのですね。考えてみてください。人口の半分からしか意思決定者が選ばれない社会と、その倍の人数から人材を選ぶ社会では、どちらがより優秀なリーダーが生まれやすいでしょうか。
かねてフェミニストを公言している国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、今回の危機でジェンダー不平等の問題が浮き彫りになったと指摘しています。ケアワーク(介護、看護、保育など)など人の命を支える仕事についている人々の多くが女性であること、しかし構造的な男女格差により、そうした労働は無給であったり低賃金であること、女性は男性に依存する存在とみなされているために社会的支援が手薄なこと。これは世界共通の問題です。背景には、根深い性差別があります。
女性は男性よりも政治・経済における発言力が弱く、女性たちが関わる領域の課題は軽視され、後回しにされがちです。その結果、危機に際して最も脆弱なのも女性なのです。「誰も置き去りにしない」というSDGs(国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」)の理念に照らして、こうした性差別と男女格差は直ちに是正しなければならない課題であるとグテーレス氏は強調しています。
富と力の所有を争う政治から、シェアとケアの政治へ。コロナ後の世界のテーマはジェンダー平等。これまで“ないことにされてきた”女性たちにチャンスを与え報いることで、私たちは強く豊かになれるのです。