劇団の担当の方から、「一度、宝塚へお越しください。練習風景をお見せします」と言っていただき、当時の漫画担当者とともに関西へ向かった。宝塚って、兵庫県の宝塚という場所にあるんだ……と、無知な私はそう思った。
稽古場の中に入れてもらい、みなさんと顔合わせをした。元気な挨拶と、姿勢の美しさにびっくりした。こちとら漫画を描いて数十年。常に前かがみで机に向かっているので、筋肉がなくて、もはや真っすぐじっと立っていられない。ずっと立っているとグラグラしてくる。
生徒さんたちは、これが全女性の理想の体型ですという方々ばかりだった。「お腹が出るってどういうことかわからない」と言われそうな美麗なスタイルである。
何よりも驚いたのは、舞台の完成度の高さだった。練習場は学校の教室くらいの大きさで、正面に座り、目の前で2時間に及ぶ歌やダンスを観て圧倒された。
「それでどうだった?」と帰京して友人に聞かれた私の感想は以下だ。
「す、すごかった。本当に全員、美しくてかわいい。身体能力がすごい。ダンスがキレッキレだった。ブロードウェイかと思った。そして男役の方は本当にかっこいい。正直言って『とはいえ男役っていっても女性でしょう』と思っていた私を叱りたい。すみませんでした!」
そう興奮気味に話したのを覚えている。つまり、練習風景を観ただけで、その沼にドブン!とダイブしてしまったのだった。
