その2週間後に東京の赤坂で舞台があり、家族やアシスタントと観劇をした。アシスタントも見事にハマり、ここから数年間、一緒に西と東の宝塚劇場へ通い、さまざまな演目を観劇することになる。
『花より男子』の舞台は、F4は漫画から飛び出してきたようにかっこよく、牧野つくしは漫画よりもかわいらしくて勇ましく、2時間強の舞台で、道明寺とつくしのもどかしくも切ないストーリーをぎゅっと凝縮して、見事に描いていた。
宝塚の演目を何度か観劇して、改めて客席を見渡すと、80代や70代のお客さんから10代まで、こんなに幅広く集客する劇団はここ以外ないのでは、と思った。
一度、隣に座った80代の方とお話したときに、その方が「宝塚を観ると元気が出るの。浮世のあれこれをすっかり忘れて違う世界に行けるのよ。若返って家に帰れるのよね、私のビタミン剤みたいなものです」と、ニコニコしながらおっしゃっていた。
私は、「これが私の目指すところだなあ」としみじみしてしまった。「私の漫画を読んで、日々のさまざまなことを忘れて楽しんでもらいたい。次の日もその次の日も、思い出すとじわっと胸があたたかく、元気になる。こんな作品を描けたらいいなあ……」と、いつも思っていた。
宝塚が観客に与えるエネルギーは計り知れない。なんなら人を長寿にしているかもしれないのだ。すべてのエンターテインメントの行きつきたい場所ではないだろうか。
漫画を描き始めのときに知り合いの男子によく言われたのは、「少女漫画の世界の男子とか、絶対にいない」というセリフだった。こんなこと言ったら問題だけど、確かにいないと思う。いや、いるかもしれないけど、私は会ったことがない。
2次元にしか存在しないと思っていたら、宝塚にいた。女性の理想とする男性を見事に描き出していて、多くのファンを長い間ずっと魅了している。