難しい役柄に思えて

(『テミスの不確かな法廷』/(c)NHK)

――市川さんの中では、津村はどんな役だと捉えていますか?

世間にあまり知られていない執行官であることとか、(その中でも数の少ない) 女性であることとか、 執行官を調べながら脚本を読んでいると、どんどん難しい役柄に思えました。監督が話してくださる津村像があるのですが、限られたシーンの中で津村のどんな面を大事にしたらいいんだろう…、と悩みながら撮影をしていました。 津村って、 ポンっと出てきて、そこで発したちょっとした一言が周りのヒントになっていくような役なので、わからない時は監督と対話しながら進めました。

――台本を読んだ時の印象と、完成した映像を見たときの印象は変わりましたか?

台本とは全くイメージが違って驚きました。綺麗な光の質感が印象的だったのと、安堂もとても可愛いらしくて、それによってほかの登場人物も、みんなそれぞれの可愛らしい部分が浮かび上がってくるような印象を受けました。

そして、自分が想像していたよりも、彼の持つ ADHD や ASD の特性の表現がわかりやすく感じたので、実際に松山さんと本番で対面したときに、 実は少し戸惑ったんです。 物語の中で安堂はそれを隠している設定で、 私(津村) がここで何か気になったりすると台詞の意味合いが変わってくる。台本にもそのあたりの心情については細かく書いていないので、どんな距離感で接したらいいんだろうと、悩んだ時もありました。

でもこの作品は、 安堂のドラマで、悩む安堂とその周りの人がそれをどう見ているのか。周りの人の見方が変化していくのも、このドラマが描く部分なのかもしれないなと、撮影をしながら考えていました。

完成した作品を観ているうちに、「ぼくは宇宙人。みんなの普通がわからない」と言っている安堂より、他の人達の方が宇宙人じゃないかと思えて来て。

改めて「普通」ってなんだろう、ないと思っているつもりだったけど、私も人に振りかざしている時があるなと考えるきっかけも頂きました。