【お義母さんの好きな花ってなに?】
地元の菓子メーカーで営業の仕事をしている祐司は、ちょうど休憩のタイミングだったのか、すぐに返信をよこした。
【知らぬ】
あまりに簡潔な三文字を信じられない心地で眺め、舞子は軽い眩暈(めまい)を感じた。知らぬって。知らぬのか。たしか祐司は就職のタイミングまで実家にいたはずだ。英子とは、二十年以上一緒に暮らしていたことになる。それでも好きな花を知る機会が一度もなかったのか。好きだと明確に言われなくとも、英子がよく選ぶ色とか、使用していたハンカチの柄とか、そういうものを通じて喜びそうな花を推測することもしないのか。
【お義母さんに関するヒントが少なすぎて、贈り物を選べないよ。なにか喜んでもらえそうなもので、心当たりはないの? 好きな食べものとか、雑貨とかさ】
次の返信には数分の間があった。さすがに実のある返事が来るだろうと思いきや、祐司のメッセージはまたもや簡潔なものだった。
【女性から見ておすすめのものならなんでもいいよ。高い化粧水でも、口紅でも】
