正面玄関横に設置された「雀の巣」のモニュメントが多くの来店客から愛されている、福来屋日本橋本店。親しみやすいデパートで、食品から衣服、日用品、貴金属など様々なものを扱っている。この福来屋に今日もまた、何かを買い求めるお客さんが足を運び――。

デパートを舞台にした、彩瀬まるさんのWEB連載小説、お楽しみください。

 福来屋一階の北側入り口近くにはモノトーンの店内に色鮮やかな花がふんだんに陳列されたモダンな花屋が入っている。舞子はファッション雑貨コーナーを離れ、花屋へ向かった。
 花屋の店頭には真っ赤なポインセチアがずらりと並び、生花を使ったリースやスワッグなど、季節を感じさせる商品も目立つ位置に配置されていた。薔薇や洋ラン、シクラメンもおすすめなのだろう。ボリュームのある塊を作って陳列されている。
 さて、それで、英子の好きな花はなんだろう。本人から聞いた記憶は――ない。過去に会った際に英子がなにか花柄の洋服や小物を身につけていた記憶も――ない。英子は化粧も服装もシンプルで、あまり主張の強いアイテムを選ばない。行き詰まりを感じ、舞子はスマホを取り出した。夫の祐司にアプリを通じてメッセージを送る。