喪の旅 愛しい人に出会い直す』(著:河合真美江/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

しっかり者の娘に支えられ

がんと宣告されて1年後、医師から「治療は無理です」と告げられた夫の願いを受け、在宅療養に切り替えた6日目に、夫は自宅のトイレで倒れて亡くなりました。娘が最期まで懸命に心臓マッサージをするなか、私は慌てるばかり。なんとか夫に呼びかけ続けていたことを覚えています。

娘と私は、同じ大切な人を失った者同士。しっかり者の娘は、夫亡き後に混乱し、弱り切った私を支えてくれました。しかし、あまりにも憔悴している私の姿を見かねたのか、優しい娘に「パパの代わりに私が死んだほうがよかったね」と言わせてしまったことがあります。

ただただ悔いるしかできないのですが、娘もまた大好きな父親を失い、悲しみを抱えていることに思い至らなかった。この出来事の後、深い傷を負いながらも、お互いを思いやって信頼し合えるようになりました。

時々、一緒に飲みに行き、パパという共通の話題で語り合える。今までで一番いい母娘関係になったように感じます。

「喪の旅」の連載で初めて取材した方は、殺陣師(たてし)の夫を亡くした、殺陣技斗師(ぎとうし)の多加野詩子さん。夫婦同業、がんで約1年の闘病と、私と共通する部分が多く、二人で泣きながらの取材になって。その時、「今日は夫が亡くなって何日目」と数えていらっしゃったのが心に残りました。

それから2年後、彼女は夫が遺した殺陣の道場を正式に受け継ぐ決意をします。その時、「もう何日目と数えない」とはっきり言ったのです。今も夫とともに生きているつもりだと。道場を守りながら、自分なりの方法も試してみたい、そんな意欲も湧いてきたと教えてくれました。