「元・管理職」が乗り越えるべき三つの壁

一つ目は、管理職時代の給与と処遇見直し後の給与との落差です。管理職はもともとの給与が一般社員よりも高いため、一律3割減といっても絶対額としては下落幅が大きく、心理的、経済的なダメージが大きいのです。

60歳時点であまり給与が下がらなかった場合、本人としては幸運ですが、会社の視線は厳しくなります。もう管理職ポストからは外れて、役割や責任は軽くなっているわけですから、人事部は「その割には給料が高すぎるよね」と考えています。人事部からだけではなく、職場の同僚からもそんな目で見られている可能性があります。しかし、管理職でなくても、高度な専門性があって若手・中堅社員よりも明らかに経験やノウハウが優れていれば、給与が高くても相応の価値が認められるはずですよね。

『定年前後のキャリア戦略-データで読み解く60代社員のリアル』(著:藤井薫/中央公論新社)

二つ目が、仕事のレベルです。たとえば、専門課長やシニアアドバイザーなどの肩書を背負っている人に、それなりの専門性がありますか? 50代後半、60代前半、60代後半のいずれにおいても、高度専門職レベルの仕事を担当している人は4分の1しかいません。残り4分の3の人は、その気になって後進にアドバイスをしようとしても、ありがた迷惑と思われているかもしれません。

60代の「元・管理職」の多くは、40歳前後で管理職になって、それから役職定年などで離任するまで十数年以上、管理職ポストに就いていた人たちです。大半は元・課長クラスでしょうから、担当分野の専門知識は持っているはずです。「それなら元・課長は問題ないのでは」と思うかもしれませんが、そうでもありません。

あなたは、今は「プレーヤー」です。管理職のように、部下が集めてきた情報から状況を判断したり、部下が作った企画を修正したりすることができるだけではダメなのです。今の時代、アドバイスだけならAIでもできます。もしかするとAIのアドバイスのほうが、広範な情報を論理的に分析していて、示唆に富んでいるかもしれません。部下に指示するのではなく、自ら動いて情報を集め、企画できてこそのプレーヤーです。