粗雑で底抜けに明るい彼を選んだ

夫とは20代後半で結婚した。それは、背伸びをする必要のない地に足がついた関係だった。欲深いくせに神経質で不安症な私は、誰と付き合っても「いつか裏切られる」と安心できず、相手を試すようなことばかりしていたが、夫はいつでも私を大きく包み込んでくれて、絶対的な安心をくれた。

アスファルトでも寝られるくらい(本当にたまに寝ている)粗雑で、細かいことは気にせず、見た目も持ち物にも無頓着の彼。

本は10年に1冊くらいしか読まない人種で、私の文章も全く理解してもらえない。

一度だけ読ませたら「いつもこんな無駄なこと考えてんの? ひえー、暇かよ」と言われたので、山ほどある(真に無駄な)夫の大量のルアーをメルカリで売ってやろうかと思った。

けれど、私にはその圧倒的な鈍感さこそが必要だった。底抜けに明るく、私の面倒くさい自意識なんて鼻で笑って吹き飛ばしてくれる人。彼と結婚すれば、もう二度と自分の内にある不安や孤独に怯えなくて済むと思った。私は、生き延びるために彼を選んだのだ。

実際、その戦略はうまくいっていた。話や価値観が合わなくても、私たちには若さがあったからだ。「夫婦」という新しい形への依存と、有り余る性欲が、精神的な繋がりのなさも誤魔化してくれていた。だから、私たちが親になるという次のフェーズに進むことになんの違和感もなかったし疑問も抱かなかった。