今はもう彼を男性として好きなのかわからない

「中年夫婦なんてみんなセックスレス」論が打ち砕かれた。それ以来、他人の妊娠報告や結婚報告などを聞くたび「この人たちはちゃんとしてるんだな……」といちいち想像しては落ち込むようになってしまった。

自分が欠陥品のように感じられて急激に焦り、修復しようと努めた。なんとしてももう一度、「男と女」に戻らなきゃ!

自分が『していない側』であることを認めたくなくて、必死で「女」を追いかけたこともある。普段は絶対つけないような、どこに布があるのかもわからない数ミリのレースの下着を買ってみた。けれど、いざそれを身につけて鏡の前に立つとそこには女を取り戻そうとして必死な、疲れた顔のコスプレ中年女性しかいなかった。

イメージ(写真提供:Photo AC)

この状況を改善したいと夫に手紙を書いたり、無理やり誘ってみたりもした。けれど、レスを解消するために無理に数回してみても、2人だけだったあの頃とは何かが決定的に違い、もはやそれはこなすべきタスクでしかなくなっていた。

今はもう、彼としたいのかどうかわからない。彼を男性として好きなのかどうかもわからない。

いや、本当はわかっている。私は彼に守られてはいるけれど、理解しあえてはいない。

私は、孤独から逃げるために最強の安全基地である彼を選んだ。彼は期待通り、私の全てを肯定し、包み込んでくれる毛布になってくれた。けれど、今の私はもう安らぎだけでは欲情できない。

毛布は私の言葉を理解しようとしてくれない。すべてを優しく吸い込むだけで、ドロドロした文章も、複雑な自意識もニコニコとスルーするだけ。私の心にはいつも触れてもらえないままだ。

この寂しくない人生を選んだ代償として、私は女としての熱を失ったのかもしれない。