私は母親になってしまった
けれど子どもが生まれるとその関係はあっけなく機能不全を起こした。
ほぼワンオペで育児をすることになった私は変化するしかなかった。授乳のためにいつでもどこでもボロンボロンおっぱいを出していたし、いつもすっぴんで、服も髪も気にしていられなくなり、情緒も不安定で急に泣いたり怒ったりすることもあった。
小さくて壊れそうな未知の生物をなんとか死なないように育てることに必死で「女」でなんかいられなかった。私は母親になってしまったのだ。
1人目を産み、母親という役割に埋没していく中、私たちの性生活は自然消滅していたけれど「一人っ子はかわいそうだから」という世間体のような、あるいは義務のような理由で、2人目を望んだ。
この時、私たちの火種はすでに消えていたのだと思う。
愛し合うためではなく2人目が欲しいという目的のためだけに、カレンダーの排卵日に丸をつける。その日が来ると、冷めた心を無理やり奮い起こして事務的に義務を果たした。スムーズに2人目を授かったのは幸運だったけれど、それを境に私たちは相手を求めることをやめてしまった。
不仲なわけではない。彼は子どもにとっていい父親だし、仕事面でも素晴らしく、人間として尊敬している。会話もよくするし、家族としては上手くいっていると思う。
ただ、もはや戦場を共に生き抜いてきた戦友みたいな感覚で、男女としての緊張感はなくなってしまっていた。
