複数の矢があるから、私たちも強い状態でいられる

響子 退院から1ヵ月後にはあなたに2時間ドラマの撮影の予定が入っていて、母は弟たちのいる実家に戻ることになったのよね。

あずさ 弟は仕事、姪も学校があるので、私たちが交代で泊まりに行って。

響子 往復2時間、疲れた状態で車を運転したり、渋滞を避けてラッシュ時の電車を乗り継いだり。これもなかなかしんどかったけれど、母にとっては住み慣れた自宅だもの。弟が母の移動範囲に手すりをつけ、リハビリも進んだ。歩行器を使って長い時間、外を散歩できるまでになったわね。

あずさ でも、寝て楽をしていたかった母を起こしてリハビリを頑張らせたのは、酷だったかと思うの。

響子 どうして? あんなに回復したじゃない。

あずさ そのまま良くなってくれていたらね……。だけど、退院して1年後、ショートステイで泊まっていた施設でふたたび発作が起こって。母の努力が無駄になってしまったようで、申し訳なかった。

響子 あなたは昔から生真面目に考えすぎるから。私としては、自分たちのできる範囲のことは、しっかりやってきたつもり。その後、いまもお世話になっている病院のリハビリ病棟から、介護型療養病床へ移って。この3年、往復4時間かけて毎日必ず誰かが母のもとへ顔を出しているのだもの。こんなにしつこい家族、うちくらいじゃない?(笑)

あずさ 弟は週のうち2日。残りの5日を姉と私、それから母の3歳下の妹である叔母の3人でスケジュール調整して。

響子 二人の舞台共演で誰も行けない日が数日続いたら、母の状態がとても悪くなってしまったのよね。弟が「こんなにも家族が来ることが大事だったのか」と驚いていたわ。

あずさ 病院に家族4人が交代で顔を出しているのも、母には毎日違った刺激になっていいのかもしれない。私たちの知らない昔話を母にしてくれる叔母にも感謝ね。

響子 三本の矢ではないけれど、複数の矢があるから、私たち自身も強い状態でいられる。

あずさ 介護する家族は互いに思いやりを持って支え合わないと、共倒れになってしまう。そんな恐怖心みたいなものもあるわね。

響子 そう、家族の間の思いやり。一人ではきっと耐えられなかったと思うわ。