あずさ 私は倒れるまで突っ走ってしまうタイプだから、プロに任せて自分の時間を持つことも大切ね。
響子 そう。介護をする人が、心身ともに元気でいることが一番。そうでないと、良い介護はできないもの。
あずさ いまの病院は、先生もスタッフも本当に良くしてくださって、いつも頭が下がる思いよ。「無理かな」と思う希望でも相談してみると、私たちの思いを汲んでやりくりしてくれる。
響子 私は、介護の仕事は報酬でも待遇の面でもっと恵まれた職業になるべきだと思うの。ところが母の介護が始まってから5年、介護や看護の環境が厳しくなってきていることが、腹立たしくてならない。国の方針が何とかならないものかと思うわ。
過去にはいろいろあったけれど
あずさ 母の言葉で一番多いのは「ありがとう」と「ごめんね」。母の感謝の思いを感じるから、私たちは幸せね。穏やかで優しい気持ちになれる。抑制が利かず暴力や理不尽な言動が出てしまうケースもあると聞くわね。将来、私たち自身、どういう性格が出るか、怖いわ。(笑)
響子 怖い。幸(ひとり娘で女優の柴本幸さん)に私はどう見えるのか。私たちの世代は介護はプロに任せたいと思う人が多い。実際、子どもの数も少ないしね。娘には「将来、親のことで決断するとき、自分が決めたことは神様が決めたのだと思って、悩まないようにしなさい」と言ってあるの。それにしても、母になってみて母の偉大さがわかったわ。
あずさ 「毎日交代で病院に介護に行くなんて、よほどいいお母様だったのね」と言われる。もちろん過去にはぶつかったこともあるけれど、つらい思い出は消えているね。
響子 私だっていろいろあったわよ。言いたいこともたくさんある。「ママ、どうしてもっと自分の体を大事にしなかったの」とか。父や弟が帰ってくるのを起きて待っていないで寝ていれば良かったのに……。だけど、昔のことはもう関係ない。
あずさ 育ててもらった恩返し、ではなくて……いま、また母から恩を受けているわね。
響子 意味があるのよ、きっと。母が生かされていることに。