「一路さんって、本当にいるんだ…」

まずは稽古場。

一路真輝さんがいらっしゃいました。

…いる。
本当に、いる。
舞台の上でしか存在しなかった人が、普通にお茶を飲み、普通に笑っている。

「一路さんって、本当にいるんだ…」

そんなことを本気で思ってしまうほど、私には遠い存在でした。

けれど、そんな遠い存在の一路さんは、驚くほど気さくで、よく笑う、穏やかな方でした。
どうしてあんなにも謙虚でいられるのだろう、と不思議になるほどに、やわらかい空気をまとっていました。

しかし。
舞台に立った途端、空気が変わりました。

歌い出しの第一声。
「♪エ~リザベート」
低音から放たれたその「♪エ~」が響いた瞬間。

はい、完成。
私の中で、何かが即座に決まりました。

はい、正解。
はい、納得。
私、チケット代払います。

たった一音で場を制圧。
これが初演の人の凄みなのか。
それとも一路真輝さんという表現者の実力なのか。

きっと両方なのでしょう。

私はあの出だしの「♪エ~」の衝撃を、一生忘れないと思います。