臨時休館日

私は愕然としました。だって、観光案内所が臨時休館日を知らないなんてことあります?

そこで事情を話したところ、対応してくれたおふたりもおおいに驚いている様子。顔には「なぜ観光案内所が臨時休館を知らないのだ?」と書いてあります。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

そうこうしていると、入り口が開き、タクシーの運転手さんが入ってこられました。私がなかなか出てこないので心配になったようです。そこで、手短に事情を説明し、仕方ないのでまた駅に戻ります……と言ったところ、館の方から待ったがかかりました。

「ご案内などはできませんが、館内は自由にご見学ください。常設展のみになりますが……」

なんと、私ひとりのために開けてくれるというではありませんか。動転した私は、若干挙動不審になりながら「いや、それはあまりに申し訳ないので……」としどろもどろに辞退しようとしたのですが、「いえいえ、こちらこそ、観光案内所の者がちゃんとした案内をできず、わざわざタクシーでお越しくださったのに、このまま帰ってもらっては申し訳なさすぎます。私たちはこのあたりの部屋で作業をしているので、帰る時に声をかけてくださればそれで結構です」とおっしゃいます。

やり取りを聞いていたタクシーの運転手さんまで、「そうしなさい。1時間ぐらいしたら、また迎えにくるから」と勧めてくれる始末。

さすがに即答できずしばらく逡巡したものの、みなさんの笑顔を見ていたら、これはもうご厚意に甘えてしまおうと決心がつきました。

こうして、なんと私は休館日に館内を独り占めするというVIPのような体験ができたのです。誰もいない静かな環境で、心ゆくまで展示を鑑賞できたのはいうまでもありません。

やがて、そろそろ迎えが来る時間になったので、作業をしていた学芸員さんに声をかけ辞去しようとしたところ、「遠いところご来館ありがとうございました」と言いながらパンフレットや愛らしい折り紙細工をお土産に持たせてくださいました。

どこまで親切なんだろう。もうありがたいやらなにやら、とにかく頭が下がる思いだったのですが、それだけで終わりませんでした。約束通り迎えに来てくれたタクシーの運転手さん、なんと迎車料金はいらない、とおっしゃるではないですか。自分の街の観光案内所が間違った案内をしたんだから、もらうわけにはいかない、と。

この街はどれだけいい人揃いなんだ。言葉にならないほど感激しました。