「老後は楽しめ」「前向きに生きろ」「健康に気をつけろ」……。年を取ると、老後の生き方についてあれこれ言われることも多くなります。78歳の評論家・勢古浩爾さんは、そうした強制社会に違和感を覚えるといい、自身の老後についても「日々、風に吹かれるすすきのように、穏やかに過ごせればいい」と語ります。今回は、勢古さんの著書『老後がめんどくさい』から抜粋し、勢古さんの老後論・人生論をご紹介します。
「楽しまなきゃ」という強迫観念
日本人はここにきて、初めて「楽しい」ということの価値に気がついたのかもしれない。人生には「享楽」や「快楽」とはちがう、純粋な「楽しさ」というものがあるのだ、と。
しかし、「楽しい」が昴進して、「楽しまなきゃ」という強迫観念になるとちがう。「楽しまなければ損」とかいいだすと、病気である。
それに「わたしは楽しい」とわざわざ口に出していうことは無用である。
そういうことをいいたがる人は、「わたしは日々の生活を、人生を楽しんでいるよ」という意味を含意して、世間に対する自慢になっているのである。
現代では「楽しむ」ことが義務となっているようなのだ。