心の傷がもたらす「解離」とは…?

ご紹介したケースのように“普通”を必死で演じてきた人に起こりやすい症状のひとつとして「解離」があります。「解離」とは、あまりにもつらい状況に直面したとき、心や体が自分を守ろうとして起こす反応です。

『かくれトラウマ - 生きづらさはどこで生まれたのか』((著:井上陽平/ワニブックス)

たとえば、強い痛み、恐怖、恥ずかしさ、混乱など、あらゆる刺激がいっぺんに押し寄せると、脳はそれに耐えきれなくなり、感じること自体を一時的に止めようとします。これが「感覚をいったん遮断する」反応です。感覚が遮断されると、こんなふうに感じることがあります。

・自分が自分じゃないような気がする(離人感)

・周りの世界が現実じゃないように見える(現実感の喪失)

・ぼやーっとして、音や景色が遠のく

・人や場所とつながっている感覚がなくなる

この感覚は「ただの疲れ」や「気のせい」と思われがちですが、実は、心の奥に深く根差した防衛反応です。

特に幼少期に、安心できる居場所や支えてくれる存在がなかった場合、こうした「切り離す」感覚は大人になってからも日常に溶け込んでしまいます。「普通」を装っていても、その内側では常に緊張し、心の声を閉じ込め続けていることも少なくありません。

また、あまりに苦しい経験を一人の「自分」で受け止めきれないとき、心は、その痛みを切り分けて、別の「役割」や「部分」に引き渡そうとします。これは、自分の中に別の自分が現れるような感覚につながることがあり、こうした状態になると、次のようなことが起こり得ます。

・パニックのときに、自分が別人になったように感じる

・感情のふり幅が激しく、突然怒ったり泣いたりする

・子どもに戻ったようなふるまいをする

・頭の中で誰かと会話しているような感覚がある