(撮影:小林ばく)
舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第18回は「振り返ればママがいる」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)

ビーフストロガノフに釘付け

これまでいろんな人にお世話になってきました。お芝居で関わった人はもちろんのこと、それ以外でも。なかでもふっと思い出すのは、足繁く通った店のママさんたちなんだよね。

最初が舞台芸術学院に通っていた頃、みんながたまり場にしていた喫茶店「ノエル」のフジタジュンコさん。90歳になった今も芝居を観に来てくれています。

舞芸を卒業して西村晃さんの付き人をしていた3年間は、西村さんの事務所の1階にある「ハナ」という喫茶店に行っていました。今村昌平さんや映画人が集まっている店で、ママがすごくいい人で。

僕が付き人を辞めて劇団四季に入ることになったときには、当時四季がジャン・ジロドゥの戯曲をよく上演していたから、「私、ジロドゥ全集とジャン・アヌイ全集を持ってるから、いっちゃんにあげる」といただいたりしたの。

後に『ホテルビーナス』という映画でホテルの女主人を演じたときは、そのママをイメージしていたんだよ。