デッド・オア・ドロボー

検察官の冒頭陳述によると、被告人は中学卒業後に会社員になり、20歳くらいからずっと盗みをして生活をしていたそうです。前科は10犯。

被告人質問。まずは弁護人から。

『バカ裁判傍聴記』(著:阿曽山大噴火/飛鳥新社)

弁護人「なぜ、こんなことをやったんですか?」

被告人「お金が欲しかったからです」

弁護人「令和6年3月に大阪刑務所を出所したと。それからどんな生活をしてたんですか?」

被告人「九州の自宅に戻って、おとなしく生活してました。そして、お金もなくなってきて盗みをしようと、東京に行きました」

一念発起、盗み目的で上京を決意です。

弁護人「また盗みをやったら、刑務所に戻るとは思いませんでしたか?」

被告人「東京ですから防犯カメラも多いですし、最近はリレー捜査もあるんで、捕まる覚悟を決めて上京しました」

リレー捜査とは、街中に設置してある防犯カメラ映像をリレーのように繋いで犯人の足取りを追跡する捜査方法です。東京地裁でも、平成30年代から証拠として提出されることが増えている印象です。前科10犯の被告人にとっては、昔はなかった警察の強力な最新捜査という認識でしょうか。

弁護人「捕まりたいんですか?」

被告人「いいえ。最後にドロボーをするなら、自分の出発点である東京でやろうと覚悟を決めました」

弁護人「覚悟が違う気がしますけどね……」

弁護人も苦笑いです。

弁護人「お金に困ってるなら、盗みなんかより、日雇いの仕事でも何でもやれば良かったじゃないですか?」

被告人「話すと長くなるんで、詳しくは言いませんけど……」

と、天井を見上げて声を低くして、ニヒルな雰囲気で語り始める被告人。

被告人「生い立ちが、まぁ、いろいろあって。人付き合いがうまくできないんです。もう……死ぬかドロボーやるかしかないと思って、東京に来ました」

デッド・オア・ドロボーという究極の二択を胸に、逮捕される覚悟を決めて東京に来たようです。