自分が父親になって初めて見えたもの
自分自身、親という立場になって思うのは、「子どもがご飯を食べている姿を見る時間」って、すごく特別なんじゃないか、ってこと。
父親にも、いろんな子どもとの関わり方があると思いますが、自分の中でもっとも「父親をやっている」のを実感するのは、子どもがご飯を食べている様子を見ているときなんですよ。
「大きくなれよ」「ちゃんと食えよ」っていう気持ちになるし、それってすごく直接的な感覚なんですよね。花に水をあげるのと近いというか、「今まさに育っている」という実感を覚える。
さっき話した自分の父親が、「いい父親だった」とは正直思わないですけど、その父親ですら、食事の時間だけは毎回食卓にいたんです。普段、好き勝手やっているのに、その瞬間だけはちゃんと食卓にいるようにしていた。
父親らしいことを全くしていないのに、ラクして「父親」を味わおうとしていたのはなんだかズルいんだけど。(笑)
あれも、彼なりの家族や子どもとの関わり方だったのかなって、今になって思いますね。
新刊の『没頭飯』について最後にお伝えしたいのは、本を読んだあとに食べた飯の一口目が「うまい」って感じてもらえたら、十分かなって。
それだけで、人生がちょっと変わる気がするんですよね。
『没頭飯』(著:鈴木もぐら/ポプラ社)
飯を語ることは、己を語ること――「食」に対する探求心と愛が凝縮された大人気連載を書籍化。父親・母親との思い出から、部活動、股関節手術、交友関係まで、「食」を通して著者の人生が垣間見られます。語り下ろしエッセイ3本、書き下ろしエッセイ4本も追加収録。2023年にダイエット成功後、我慢せず食べたものをXで紹介し話題を呼んだ「復讐」投稿も収録。装画・挿画は大橋裕之氏(漫画家)。




