虫コレクターの推理は……
私たちの死体に話を戻そう。
マルセルは、問題の部屋の温度が高かったために、膨大な数の蠅が記録的な短期間に集まり、増殖したことを証明してくれた。これにより、死亡時期は発見の8日前、すなわち警察による家宅捜索の2日後である、と推定できた。
警察や司法当局は、この結果にほっと胸を撫で下ろした。
私たち法医学医にとっても前代未聞の経験であった。
蠅と蛆虫があれほどの速さで死体をきれいに始末したのを見たのは、私のキャリアを通して後にも先にもない。例外的な条件が整っていたことは本当だ。
季節は真夏、しかも非常に暑い夏だった。
部屋は狭くて南向きで、カーテンのかかっていない窓は二重ガラスだった。
あの部屋は蠅の孵卵器そのものだった。
※本稿は、『死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
『死体は語りだす:法医学医が読み解く「死者からのメッセージ」』(著:フィリップ・ボクソ 訳:神田順子/三笠書房)
一見すると不可解な死の裏側には、人間の弱さ、色恋、憎悪、執念、そして切ない想いが隠されていた――。
ミステリー好きも、ノンフィクション好きも、ページをめくる手が止まらなくなる一冊!




