率先して「飛んだ」のは誰か

ところが、黒田総裁の任期が残り1年となった2022年春、日本に突然インフレが訪れ、その流れは今も続いている。もちろん、日本経済が完全にデフレ脱却を果たしたとは言えないが、黒田時代と比べれば確実に前進した。

今では多くの消費者、経営者、労働者が「インフレはこの先も続く」と信じている。「デフレが当たり前」から「インフレが当たり前」へと、人々の意識は大きく転換した。黒田総裁が思い描いた「みなが飛べると信じる社会」が、現実に姿を現したのだ。

ただし、そのきっかけは黒田総裁の呼びかけではなかった。海外から流入したインフレ、すなわちパンデミックと戦争が原因だった。人々の信念を変えたのは、言ってみればウイルスとプーチン大統領だったのである。

しかし黒田総裁が望んだのはこうした外圧ではなく、国内の誰かが勇気を持って飛び、その成功が周囲に伝わることだったはずだ。

では、国内で最初に「飛んだ」のは誰か。筆者は2024年4月のエッセーで、それは労働者と労働組合だったのではないかと書いた。今もその認識に変わりはない。