2015年6月の「クロダ・ショック」

労働者と労働組合が大事な役割を果たしたと筆者が考える理由は、2015年6月に起きた「クロダ・ショック」にさかのぼる。

2013年4月、黒田総裁の異次元緩和が始まると、大胆な金融緩和は急速な円安をもたらし、それが国内の物価を押し上げた。下図にあるように、円安が先行し、それを追いかけるようにして物価が上がった。ところが2015年6月以降、為替は円高へ反転し、インフレにも急ブレーキがかかった。

<『インフレの時代-賃金・物価・金利のゆくえ』より>

この反転の原因は、黒田総裁が国会で行った答弁にあった。急速な円安による物価上昇に消費者の不満が高まり、その声が政治家を通じて日銀にぶつけられたのである。黒田総裁は国会に呼ばれ、円安と物価高に歯止めをかけるべきではないかと追及された。

そこで黒田氏は「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、なかなかありそうにない」と答弁した。遠回しな表現ではあったが、市場はこれを「これ以上の円安を日銀は望まない」というシグナルと受け止めた。その瞬間、為替は急速に円高へ反転し、インフレも減速した。これが「クロダ・ショック」と呼ばれる出来事である。