実質賃金の引き上げ
賃上げが当たり前の社会を定着させるための次のステップは、物価上昇を上回る賃上げの実現、つまり、実質賃金の引き上げだ。22年春以降のインフレ局面で実質賃金は6%低下しており、この是正が急務だ。
実質賃金の引き上げは人手不足と密接に関係している。人手不足とは労働供給が労働需要を下回っている状況であり、実質賃金が低すぎるために起きる現象だ。実質賃金を引き上げれば労働者はもっと働きたいと考えるようになるので労働供給が増える一方、企業は雇用を抑えようとするので労働需要が減る。
このようにして労働の需要と供給が一致する均衡に近づく。この均衡における実質賃金が「自然」実質賃金であり、社会が目指すべき理想の水準である。足元の実質賃金の水準が「自然」水準からどれだけ乖離しているかを正確に認識した上で、いかにして「自然」水準に近づけるかの戦略を練るべきである。
※本稿は、『インフレの時代-賃金・物価・金利のゆくえ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『インフレの時代-賃金・物価・金利のゆくえ』(著:渡辺努/中央公論新社)
世界で先行していた物価の高騰=インフレーションが、日本でも2022年春から始まった。
それまでの慢性デフレから一転したのはなぜか――。
物価研究の第一人者がその謎を解く。




