ダラダラ続いた「自粛」
高いニッポンだった30年前は2つの「自粛」に合理性があった。しかし今は安いニッポンだ。自粛を続ける理由はどこにもない。
私たちの社会はどうやら自粛をダラダラ続けるというミスを犯したようだ。自粛を解くタイミングがなかったわけではない。例えば、第2次安倍政権が春闘に介入し官製春闘と揶揄されたあのとき、連合が高い賃上げ要求に踏み切っていれば自粛を解けたかもしれない。
もしかすると、自粛というものはいったん始めてしまうと、止めるのが難しいものなのかもしれない。コロナ禍の外出抑制やマスク着用などの「自粛」もそうだった。パンデミック後の経済再開で日本は米欧に後れをとったが、その理由は自粛をいつまでも解かなかったからだ。結局、政府が感染症法上の分類を5類に変更するまでダラダラと自粛が続いた。
賃上げと値上げの自粛には、「5類移行」のようなうまい措置は残念ながらないので、一気に自粛を解く手立てを政府はもっていない。しかし2023年春以降の春闘の成功で自粛は解けつつある。26年春も再度の高い賃上げが実現し、自粛解除の流れが加速することを期待したい。
※本稿は、『インフレの時代-賃金・物価・金利のゆくえ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『インフレの時代-賃金・物価・金利のゆくえ』(著:渡辺努/中央公論新社)
世界で先行していた物価の高騰=インフレーションが、日本でも2022年春から始まった。
それまでの慢性デフレから一転したのはなぜか――。
物価研究の第一人者がその謎を解く。




