90年代の「トラウマ」

しかし、それ以前の「映画」(フィルム)の秩序がいまだ根強いリアリティを維持していたために、つい最近まで、「映像」という新たな論理は興行や批評の現場で抑えつけられていた。

16年に『君の名は。』や『シン・ゴジラ』の大ヒットとして起こったのは、いわばそうした「映像」という90年代の「トラウマ」がはっきり解放されたという徴候的な事態ではなかったか。

90年代のある一部の邦画たちは、その意味で、日本映画史におけるひとつの「トラウマ」になぞらえられるだろう。

※本稿は、『『君の名は。』は日本映画に何をもたらしたのか 庵野秀明・岩井俊二・新海誠から読み解く現代日本映画史』(星海社)の一部を再編集したものです。

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『君の名は。』は日本映画に何をもたらしたのか 庵野秀明・岩井俊二・新海誠から読み解く現代日本映画史』(著:渡邉大輔/星海社)

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