ならばなにになりたかったのかと言えば、専業主婦である。優しい亭主と子どもに恵まれた専業主婦になることが、私にとっての幸せだと信じていた。それなのに、どうして仕事を長く続けることになったのか。その理由はよくわからないけれど、とにかくあちこちで、「自信がない」とか「シロウトなんで」とか、挨拶がわりにいちいち言い訳をしていたら、あるとき年配の紳士に叱られた。

「謙遜しすぎるのも嫌味だよ。謙遜すれば許されるとでも思っているの?」

ギョッとした。許されると思っていたわけではないけれど、たしかに当初の予定に反して仕事が続いている以上、それはいわゆる卑下自慢に聞こえてしまうかもしれない。反省した。そして思い出した。

さらに昔、同じようなことを言われた記憶がある。学生時代、先輩の男性から叱責に近い手紙を受け取った。

「君は自分のことをダメだダメだと言うけれど、本当にダメだと思っているわけではなく、そう唱えて底辺にいれば、それ以上落ちる心配がないと思って安心したいのだろう。つまり、努力をしないで周辺に『期待しないでください』と断りを入れているようなものだ」

その手紙を読んだときはひどくへこんだ。そんなつもりで謙遜しているわけではなかったのに、まるで私がどうしようもない甘ったれだと断罪された気分だった。でも今になると、わかる。あれは私の悪い癖だった。