とはいえ、いくら反省したところでにわかに自信がつくわけではない。持って生まれた「自信ない病」は、そう簡単に治らない。何度も過剰に謙遜し、何度もそれを繰り返し、何度も人様に叱られるうち、だんだんわかってきた。なにがわかったかというと、自分では自分の能力の程度をたいしてわかっていないということを。
自分の得手不得手や魅力や実力がどれほどのものであるかわからないときは、そばにいる人の言葉を当てにするといい。そう教えてくださったのは、布施明さんである。
布施さんは子どもの頃から歌が上手だった。そして歌手になった。楽しかった。しかし人気に頼る商売なんて男が一生を懸けるものではない。当時はそう思われていた。だから布施さんも、「そろそろ真っ当な職業に就こう」と、歌手引退を目論んだ。しかしどのタイミングで引退を申し出よう。すでに人気者だった。周囲は辞めさせてくれないに違いない。でも、歌が売れなくなったら、「辞めてよろしい」とまわりも納得するだろう。まもなく新しい曲が届いた。「シクラメンのかほり」だった。世紀の大ヒットを記録した。辞めるどころの騒ぎではなくなった。
「そのとき、僕は思ったんです。自分よりまわりの人のほうが、僕のことをちゃんとわかっているんだなってね」
その話を聞いて私は自信が湧いた。仕事への自信ではない。自信がなくても、信頼できる人がすすめてくれ、褒めてくれる方向へ向かえば、いつか新しい道は開けるだろう。
世の中には他人の褒め言葉なんて信じないと言う人もいる。自分がいちばん、自分の仕事の出来をよくわかっている。あるいは、けなしてくれる人の言葉を信じると。そういう人に会うと、私は心の底から尊敬したくなる。そんな根性は私にない。褒めてもらえば翌日も頑張るが、ケチョンケチョンにけなされたら、さっさと布団に潜り込む。
