舞台本番で小道具を仕込むのも付き人の仕事だけど、学生アルバイトで付いたときの『聖スブやん』という舞台では仕込むのを忘れたことがあってね。「花も実もある」という台詞で先生がポケットから花を出そうとしたら……ない。初トチリですよ。
先生はマイムでごまかしてくれたけど、怒られると思って謝りに行ったら、「一回の失敗はしょうがない。二度と繰り返すなよ」。怒鳴られるより沁みたね。
西村さんはバイプレイヤーだったので、いろいろな主役の方の芝居を生で目にすることができたのも刺激的でした。勝新太郎さん、森雅之さん、森繁久彌さん。『雁の寺』では中村嘉葎雄さんや岡田茉莉子さんとも親しくさせていただきました。
それから、名鉄劇場の『文七元結』の古今亭志ん朝さんと三木のり平さんのやりとり。僕も後に「市村座」で『文七元結』をやり、また志ん朝さんは、『クリスマスキャロル』のパンフレットの対談ゲストに来てくださった。
同じく名古屋の御園座でご一緒した萬屋錦之介さんは、夜、僕が西村先生の洗濯をしているところに通りかかって「ご苦労さんだね」と声をかけてくださり、部屋に呼んでいただきお酒をご馳走になったんだよ。