「Lemon」という分水嶺
なかでも目覚ましい存在感を見せたのが米津玄師だった。「Lemon」と「馬と鹿」の2曲、菅田将暉「まちがいさがし」とFoorin「パプリカ」という提供曲をあわせれば4曲をトップ10に送り込んでいる。
「Lemon」は2018年に続いてビルボードジャパン年間チャートでは史上初となる2年連続総合1位。異例のロングヒットだ。
ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として書き下ろされたこの曲は、〈夢ならばどれほどよかったでしょう 未だにあなたのことを夢にみる〉という痛切なフレーズで幕を開ける。死別の喪失感と、取り戻すことのできない大切な人への思いを綴った楽曲だ。
なぜこの曲はここまでヒットしたのか。
「じいちゃんが“連れて行ってくれた”ような感覚があるんです」(『音楽ナタリー』米津玄師「Lemon」インタビュー 2018年3月13日掲載)
米津は「Lemon」を作ったときのことについて、筆者の取材に応えてこう語っている。
『アンナチュラル』は、法医学者たちが「不自然な死」を遂げた遺体の謎を究明していくストーリーだ。ドラマには愛する人の予期せぬ死に直面した人々がたびたび登場する。
「傷付いた人を優しく包み込むようなものにしてほしい」。ドラマ制作側からはそんなオーダーがあった。当初はその依頼に忠実に作り始めた。ただ、その楽曲制作の途中に米津の祖父が他界する。
「最初はドラマと自分の中間にあるもの、そこにある一番美しいものを目指して作り始めたんです。でも、そうやって自分の目の前に死が現れたとき、果たしてそれは一体どういうことなんだろうって思って。今までの自分の中での死の捉え方がゼロになった。それゆえに、また1から構築していかなければならなくなった。気が付いたらものすごく個人的な曲になったような気がします」
