毒蝮 新聞の投書欄に載っていた小さな記事を紹介したんだよ。都営バスでの出来事なんだけど、ひとりのおばあさんがそのバスに乗ってきた。すると、乗客のひとりが席を譲ったんだね。

たまたまそれに気づいた運転手が車内放送で、「ただいま席を譲ってくれた方がいました。どうもありがとうございました」と感謝の言葉を述べたんだってさ。

玉袋 なるほど、それはまた心温まるいい話ですね。

毒蝮 その投稿は、そのバスに乗っていた人からのものだったんだけど、そのアナウンスを聞いて、「運転手さんのさりげないひとことで、車内には温かい空気が流れました」という内容だったんだよ。

玉袋 なるほど、ますますいい話ですね。

毒蝮 だろ? この投書を講義のなかで紹介したんだ。聴講しているのは19歳から20歳の女の子80人くらい。社会福祉学科なので、将来はそっち方面での就職を考えている子たちがほとんどだよな。

その子たちに感想を尋ねると、「いい話ですね」とか「運転手さんの優しい気持ちが素敵です」とか、いまの玉のような感想がほとんどだった。それはある程度は予想がつくよな。でも、そのなかでひとり、ふたり、まったく違う感想だったんだよ。

玉袋 どんな感想だったんですか?

毒蝮 「わたしなら、次のバス停で降ります」っていうんだよ。

玉袋 えっ、どうして?

愛し、愛され。』(毒蝮三太夫、玉袋筋太郎:著/KADOKAWA)